2025/12/05

インド新卒採用の給与戦略:相場観と勝てるオファー設計

優秀なインド人学生を採用するには、現地の給与構造と相場観の正確な理解が不可欠です。本記事では、IIT(インド工科大学)をはじめとするトップ層の最新給与トレンドと、日本企業がBig Techと競合しても勝ち抜くためのオファー設計(CTC構造)について解説します。

IIT・Tier1大学のリアルな給与相場

インドのトップ大学(IITs, NITs, BITS Pilaniなど)の新卒採用市場は、極めて競争が激しい「売り手市場」です。日本企業の採用担当者がまず認識すべきは、提示額の基準値です。

LPA(Lakhs Per Annum)という指標

インドでは年収をLakh(1 Lakh = 10万ルピー)単位で語ります。現在のIITトップ層の相場は、最低でも20 LPA(約360万円〜)からスタートし、優秀層では30〜40 LPA(約540万〜720万円)に達することも珍しくありません。米系Big Techや高頻度取引(HFT)を行う金融企業は、さらに桁違いのオファー(1Cr = 1000万ルピー超)を提示します。

日本企業が狙うべき適正ライン

すべての日本企業がGAFAと同額を出す必要はありません。日本企業が狙うべき「トップ層の中で日本就職に関心がある層」に対する競争力のあるオファーラインは、概ね22〜30 LPA(約400万〜550万円)程度が目安となります。Tier2大学の優秀層であれば、15〜20 LPA程度から交渉可能です。

CTC(Cost to Company)の構造と落とし穴

インドの給与提示において最も重要な概念が「CTC(Cost to Company)」です。これは会社が従業員にかける「総費用」を指しますが、日本で言う「額面給与」とは構成が異なります。

固定給と変動給のバランス

CTCには、基本給(Base Salary)のほか、家賃手当(HRA)、特別手当、そして変動賞与(Variable Pay)、さらには保険料や退職金積立(PF)までが含まれます。学生はCTCの総額だけでなく、「Take Home(手取り)」がいくらになるかをシビアに見ます。CTCが高くても、変動比率が高すぎたり、将来の権利確定(Vesting)が遠いストックオプション(ESOP)ばかりだと、オファーを辞退されるリスクが高まります。

Joining Bonusの活用

競合他社との差別化に有効なのが「Joining Bonus(入社支度金)」です。これはCTCに含まれる場合と別途支給の場合がありますが、入社直後のキャッシュフローを重視する学生にとって、数十万ルピーの一時金は強力なアトラクションになります。


「購買力平価(PPP)」を用いたロジック構築

額面金額だけで比較すると、ルピー安の影響もあり、日本円の給与は米ドル建ての給与に見劣りすることがあります。そこで重要になるのが、PPP(購買力平価)を用いた説得ロジックです。

東京での生活水準の可視化

「日本の30 LPAは、インドの30 LPAよりも生活水準が高い」あるいは「貯蓄ができる」という事実を、具体的な生活コスト(家賃、食費、インフラ)と比較して示す必要があります。単に「円」で提示するのではなく、「可処分所得として何が買えるか」「どれだけ安全で快適な生活が送れるか」を数値化してプレゼンすることが、意思決定の後押しになります。

インフレ率と昇給曲線の提示

インド経済はインフレ基調にあり、現地企業では年間10%〜15%の昇給が一般的です。日本企業によくある「年数%の定昇」という感覚でオファーを出すと、数年後の離職原因になります。

キャリアパスと昇給の明確化

初任給だけでなく、入社後3年〜5年の昇給シミュレーションを提示することが重要です。「成果を出せば、日本の年功序列に関係なく給与が上がる」という制度設計と実績を示すことで、上昇志向の強いインド人材の安心感を勝ち取れます。

給与以外の「リロケーションパッケージ」

海外就職を決断する学生にとって、金銭以外のサポートは心理的な障壁を下げる決定打となります。

生活立ち上げのフルサポート

  • 渡航航空券の支給

  • 最初の1ヶ月〜3ヶ月の住居提供(または借り上げ社宅)

  • ビザ申請費用の全額負担と手続き代行

  • 日本語学習費用の補助

これらを「福利厚生」としてではなく、オファーレターに明記された「パッケージ」として提示することで、企業としての誠意と受け入れ体制の万全さをアピールできます。

まとめ

インド新卒人材の採用における給与戦略は、単なる「高い金額の提示」ではありません。CTCの構成要素を最適化し、PPPを用いて実質的な豊かさを伝え、インフレ率を考慮した昇給カーブを描くという、緻密な計算が必要です。彼らは自身の市場価値を正確に把握しています。だからこそ、論理的で誠実なオファー設計が信頼を生みます。

Phinx(フィンクス)の強みとご提案

Phinxでは、インド現地の最新給与データベースに基づき、貴社の採用ターゲット(大学ランク・技術領域)に合わせた最適な給与テーブルの設計支援を行っています。また、学生との条件交渉においては、給与だけでなく、日本でのキャリアパスや生活環境のメリットを含めたトータルな価値提案を代行し、内定承諾率の最大化に貢献します。「相場がわからない」「競合に負けないオファーを作りたい」とお考えの採用担当者様は、ぜひPhinxにご相談ください。

執筆者

Maya Takahashi

Head of Career Consulting

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Maya Takahashi

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