2025/12/08

インド新卒採用と日本の決定的違い:構造・意識・文化の徹底比較

日本とインドの新卒採用は、時期・選考基準・キャリア観が根本的に異なります。日本の「ポテンシャル採用」がなぜ通用しないのか、インド工科系大学の就職システム(プレースメント)の実態と構造的な違いを専門視点で解説します。

採用マーケットの構造:「メンバーシップ型」対「ジョブ型」の衝突

日本の新卒採用は、職務を限定せず「会社の一員」として迎え入れるメンバーシップ型が主流であり、白紙の状態で入社し、OJTで育成されることが前提です。対してインド、特にIIT(インド工科大学)をはじめとするトップ層の採用市場は、完全な「ジョブ型」かつ「スキルベース」です。

スキルは「入社後に身につけるもの」ではない

インドの工科系学生にとって、大学期間は実務スキルを磨く場です。インターンシップや個人的なプロジェクトを通じて、C++、Python、Javaなどの言語スキルはもちろん、AIモデルの構築やフルスタック開発の経験を積んでから選考に臨みます。日本企業が重視する「素直さ」や「熱意」よりも、「即戦力としてどのプロジェクトに貢献できるか」が評価の主軸となります。

「プレースメント」という独自の大学主導システム

インドの大学採用における最大の特徴は、大学内に設置された「プレースメントセル(就職課)」が絶大な権限を持っている点です。日本の「リクナビ」や「マイナビ」のような自由応募型メディアは、トップ層の採用では機能しません。

Day 0 / Day 1 で勝負が決まる短期決戦

多くの大学では、プレースメントシーズン(通常12月開始)の初日(Day 1)や前日(Day 0)に、Google、Microsoft、外資系コンサル、ユニコーン企業などの人気企業が面接枠を独占します。学生はGPA順やスキル順にランク付けされ、上位層から順に内定を獲得していきます。

  • 日本: 大学3年生から開始し、数ヶ月かけて複数回の面接を行う

  • インド: 履歴書提出から内定まで数日、場合によっては数時間で完結する

このスピード感の違いを理解せず、日本式の「持ち帰って検討」を行うと、その間に他社(特に欧米企業や現地テック企業)に候補者を奪われることになります。

選考基準のズレ:ポテンシャル評価の落とし穴

日本企業の人事担当者がインド人学生を面接する際、「学生時代に力を入れたこと(ガクチカ)」や「協調性」を質問し、会話が噛み合わないケースが散見されます。

定性評価よりもGitHubとLeetCode

インドのエンジニア採用では、コーディングテストのスコアやGitHubのリポジトリ、LeetCode(アルゴリズム競技サイト)のランクが「名刺代わり」です。技術的なスクリーニングなしに人柄だけで採用を決定することは、学生側から見ても「技術を軽視する企業」と映り、辞退率を高める要因になります。 面接官の技術理解度が必須 採用担当者自身、あるいは同席するエンジニアが、候補者の技術レベルを正しく評価できなければなりません。Phinxでは、DX・システム開発経験のあるメンバーが技術面でのスクリーニングを支援していますが、この「技術言語での対話」が信頼構築の第一歩となります。

キャリア観の違い:リテンション(定着)への意識

「新卒入社=終身雇用」という概念は、インドのトップ層には存在しません。彼らにとってキャリアは「階段」であり、数年ごとにスキルアップと昇給を目指して転職するのが一般的です。

離職を防ぐのは「愛社精神」ではなく「成長機会」

インド人材の離職率が高いと言われる背景には、入社後のミスマッチがあります。「配属ガチャ」や「レガシーな技術環境」は致命的です。

  • 明確なキャリアパスの提示

  • 最新技術(AI、クラウドネイティブ等)に触れる機会

  • 成果に基づいた適正な給与改定

これらが揃って初めて定着します。日本的な「石の上にも三年」を期待するのではなく、合理的なメリットを提供し続けるリテンション設計が必要です。

給与構造:CTC(Cost to Company)の理解

日本では「大卒初任給一律◯◯万円」が一般的ですが、インドでは大学のランク、個人のスキル、職種によって初任給に数倍の開きがあります。また、提示額は「CTC(Cost to Company)」という概念で語られます。

手取り額とのギャップに注意

CTCには、基本給に加え、ボーナス、家賃手当、保険料、ストックオプションなどが全て含まれます。日本側が提示した「年収」が、彼らの認識するCTCと乖離していると、入社直前にトラブルになるケースがあります。現地の相場観(たとえばTier1大学の平均パッケージと、Tier2・Tier3の優秀層の期待値)を正確に把握し、競争力のあるオファーを出すことが求められます。

日本企業が勝つための採用戦略

GoogleやMicrosoftと資金力で真っ向勝負をする必要はありません。インドには「日本で働きたい」「高度なモノづくりに関わりたい」と考える親日かつ優秀な層が確実に存在します。

Tier2・Tier3大学のトップ層という鉱脈

IITのトップ層は世界的な争奪戦ですが、Tier2や地方の工科大学のトップ層には、技術力がありながら機会に恵まれていない原石が多数います。Phinxのようなエージェントを介して、大学ごとの特色を理解し、ピンポイントでアプローチすることで、中小企業や成長企業でも優秀なエンジニアを獲得可能です。

まとめ

インドと日本の新卒採用は、構造もスピード感も対極にあります。日本企業が成功するためには、現地の「プレースメント」の仕組みを理解し、技術ベースの評価軸を持ち、スピーディーに意思決定を行う体制変革が必要です。

Phinxが提供する「構造的ギャップ」の解消

Phinxは、単なる人材紹介に留まらず、日本企業がインド採用で直面する構造的な課題を解決します。

  • 強固な現地ネットワーク: Tier1からTier3まで、工科系大学のプレースメントセルと直接連携し、一般公募では出会えない層へアクセスします。

  • 技術理解とスクリーニング: 開発経験者がスキルを見極めるため、「採用したのに技術力が足りない」というミスクマッチを防ぎます。

  • 一気通貫の定着支援: ビザ取得から来日後の生活立ち上げ、さらには日本企業の文化になじむためのオンボーディングまで伴走します。

「初めてのインド採用で何から始めればいいかわからない」「過去に採用したが定着しなかった」という人事責任者様は、ぜひ一度Phinxにご相談ください。貴社の技術課題と組織文化に最適な、ピンポイントの採用戦略をご提案します。


執筆者

Maya Takahashi

Head of Career Consulting

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Maya Takahashi

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