EORとは?海外雇用代行の仕組み・費用・選び方を実務視点で解説

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海外人材を雇用したくても、採用国に現地法人がなければ、雇用契約や給与計算、社会保険、税務への対応が障壁になります。 EORは、この雇用管理を現地の事業者に委ねる仕組みです。 ただし、EORを導入しても、候補者の発掘、技術評価、日々のマネジメントまで自動的に解決するわけではありません。 導入判断では、EORが担う業務と日本企業側に残る業務を分けて考える必要があります。

結論要約

  • EORとは、現地法人を持たない企業に代わって現地事業者が法的雇用主になる仕組み

  • EORの標準機能は雇用契約、給与、税務、法定福利厚生などで、採用や技術評価は別サービスの場合がある

  • 公式公開価格の例は1人あたり月額599米ドルからで、福利厚生、為替、個別対応費は別途確認が必要

  • 少人数で海外採用を試す企業には向くが、長期・大規模展開では現地法人との比較が必要

EORとは何か

EORとは、Employer of Recordの略で、海外人材を受け入れる企業に代わり、現地のEOR事業者が法的雇用主となる仕組みです。
EOR事業者は雇用契約、給与支払い、税務申告、法定福利厚生、入退社手続きなどを担当し、受け入れ企業は業務内容、目標、評価、日常のマネジメントを担当します。

EORの雇用関係

EORでは、法的な雇用関係と実際の業務運営を分けます。

主体

主な役割

判断時の注意点

EOR事業者

雇用契約、給与、税務、法定手続き

対応国と自社雇用法人の有無を確認する

日本企業

業務指示、目標設定、評価、情報管理

海外メンバーを管理する体制は自社で持つ

採用支援会社

候補者発掘、面接設計、条件調整

EOR料金に含まれるとは限らない

重要なのは、EORが「雇用の器」を提供するサービスであり、「必要な人材を見つけて活躍させる仕組み」まで一括で提供するとは限らない点です。
採用機能を持たないEOR事業者を選んだ場合、日本企業は候補者探しと選考を別途設計します。
この切り分けを誤ると、契約は始まったのに候補者がいない、採用できたのに現場の評価基準がない、という状態になります。

採用代行との違い

採用代行や人材紹介は、候補者を探し、選考を進め、条件調整を支援するサービスです。
EORは、採用した人材を現地で雇用するための法人・労務・給与の基盤を提供します。
両方を同じものとして扱うと、見積もり比較の時点で支援範囲がずれます。
EOR事業者に採用機能がある場合でも、どの職種に強いのか、技術評価まで対応するのか、入社後の定着支援を含むのかは別に確認する必要があります。

EORが代行する業務と企業側に残る業務

EORの導入効果は、業務を丸投げできることではなく、現地雇用に伴う管理業務の責任分界を明確にできることです。
契約前には、EOR事業者、日本企業、採用支援会社の3者で、誰が何を決めるのかを分けておきます。
特に採用要件、候補者評価、給与条件、入社後の評価は、日本企業側の判断が残りやすい領域です。

EORが担う業務

EORが担うこと

日本企業に残ること

契約前に確認すること

現地雇用契約

採用要件の定義

契約書の修正範囲

給与計算と支払い

面接と技術評価

給与締め日と請求通貨

税務・法定届出

業務指示と評価

現地専門家の対応体制

法定福利厚生

入社後の育成と定着

任意福利厚生の選択肢

入退社手続き

情報セキュリティ

解雇・退職時の費用

インドでは、EPFなどの社会保障対応が雇用実務に含まれます。
EPFOの公式資料では、EPFの標準的な拠出率として従業員12%、雇用主側も所定の負担を行う構造が示されています。
ただし、適用条件や賃金上限、International Workerの扱いには例外があるため、個別の給与設計はEOR事業者と専門家に確認する必要があります。

日本企業に残る業務

採用経験者でも見落としやすいのは、EORの契約開始日と候補者の入社可能日は同じではないことです。
候補者の退職予告期間、雇用契約の調整、機器配送、アクセス権限の準備が残るため、EORのオンボーディング速度だけで採用計画を引くのは避けます。
また、入社後の業務指示、評価面談、キャリア説明、情報セキュリティ教育は、EORではなく受け入れ企業が主導します。
海外人材を初めて受け入れる企業ほど、契約業務よりもこの運用設計でつまずきやすくなります。

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EORの費用はどう決まるか

EORの費用は、EOR手数料だけでは判断できません。
人件費、法定負担、福利厚生、為替、採用費、機器、退職時の費用まで含めた総雇用コストで比較します。

公開価格を見るときの前提

2026年6月15日に確認した公式公開価格では、DeelのEOR Standardは1人あたり月額599米ドルから、Remoteは月払い699米ドル、年払い換算599米ドルです。
これは世界向けプランの掲載価格であり、インド固有の最終見積額を示すものではありません。
実際の費用は、雇用国、給与水準、福利厚生、契約期間、支払い通貨、退職時対応の条件で変わります。
公開価格は比較の入口として使い、意思決定には同じ前提で取得した見積もりを使うべきです。

見積もりで確認する費用項目

費用項目

内容

確認ポイント

EOR手数料

雇用管理サービスの利用料

月払い・年払い、最低人数

給与と法定負担

給与、社会保障、税務関連

賃金定義と適用条件

福利厚生

医療保険など

法定分と任意分の区別

為替・送金

請求通貨の換算

適用レートと手数料

個別対応

契約修正、退職、移行支援

標準料金に含まれる範囲

安い基本料金でも、採用支援、バックグラウンドチェック、機器管理、ビザ・移住支援が別料金なら、総額は増えます。
比較時は、同じ給与、同じ福利厚生、同じ契約期間を前提に各社へ見積もりを依頼すると差を把握しやすくなります。
日本円で予算化する場合は、為替レートと請求通貨も確認します。
月額料金だけを見て稟議を通すと、入社後に福利厚生や送金手数料が追加され、採用計画全体の費用対効果を説明しにくくなります。

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EORは本当に割高か?直接雇用との隠れコスト比較と実務判断基準

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EORの見積もりは、直接雇用より高く見えることがあります。 ただし、その差はEORだけが割高だからではなく、直接雇用側の法人設立、給与計算、法務、税務、撤退費用が別予算に分散して見えにくいことでも起こります。 この記事では、EORと直接雇用を総雇用コストで比べ、海外採用でどちらを選ぶべきかを判断する方法を整理します。

EOR導入の流れ

EOR導入は、事業者の契約だけでなく、採用と受け入れ準備を並行して進めます。
先にEOR事業者だけを決めても、職務要件や候補者像が曖昧なままでは採用は進みません。
反対に候補者を先に決めても、雇用条件や入社手続きが詰まっていなければ、オファー後に調整が長引きます。

導入前に決めること

ステップ

主な作業

完了条件

1. 要件整理

国、職種、人数、期間を決める

EORを使う理由が明確

2. 事業者比較

料金、法人、支援範囲を確認

同条件の見積もりが揃う

3. 候補者選考

発掘、面接、技術評価を行う

採用条件に合意できる

4. 雇用準備

契約、給与、福利厚生を設定

入社日と費用が確定する

5. 受け入れ

機器、権限、目標を準備

初日から業務開始できる

採用と受け入れを並行する

導入前には、EOR事業者、日本企業、採用支援会社の役割分担を一枚にまとめます。
特に、候補者へのオファー説明、給与交渉、技術評価、入社後の1on1を誰が担当するかを曖昧にしないことが欠かせません。
インド人材の場合、候補者の退職予告期間や現職の引き継ぎ、給与期待値の調整も採用期間に影響します。
EOR契約の開始予定日だけで採用スケジュールを組まず、候補者側の意思決定と日本側の受け入れ準備を同じ工程表で管理します。
この工程表がないと、EOR側の手続きは終わっているのにPCや業務権限が間に合わない、候補者には入社日を伝えたのに日本側の評価者が決まっていない、といった小さな遅れが重なります。

EORが向く企業・向かない企業

EORは、海外採用の初期段階で固定費と管理負荷を抑えたい企業に向きます。
一方、人数が増え、長期運営が前提になるほど、現地法人を持つ選択肢も比較対象になります。

EORが向く企業

  • 現地法人がない国で、まず1人から数人を雇用したい

  • 新市場や採用チャネルを検証したい

  • 現地の給与・税務・法定手続きを内製できない

  • 採用開始までの法人設立を待てない

EORが向かない可能性がある企業

  • 多人数を長期間雇用する計画が固まっている

  • 現地で営業契約や請求など、雇用以外の事業活動も行いたい

  • 独自の就業規則や福利厚生を細かく反映したい

  • EOR事業者を介した雇用では満たせない知財・顧客要件がある

人数だけで損益分岐点を決めるのは危険です。
現地法人には設立費用だけでなく、会計、税務、登記維持、取締役、銀行、労務の運用負荷があるため、3年間程度の総コストと事業目的で比較します。
短期の検証ならEORで始め、採用人数、売上責任、顧客契約、現地での採用継続性が見えてきた段階で法人化を検討する流れが現実的です。
最初から法人設立を前提にすると立ち上がりが遅くなり、逆にEORのまま拡大し続けると、雇用以外の事業活動で制約が出やすくなります。

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インドの優秀な人材を活用したい日本企業は増えていますが、契約形態が多様で判断が難しい場合もあります。この記事ではEORとその他の契約形態を比較し、メリットとデメリットを分かりやすく丁寧に詳しく解説します。 

インド採用で事業者を選ぶチェックポイント

インド人材採用では、EORの労務機能と採用の質を別々に評価します。
EOR事業者の管理機能が強いことと、インドのエンジニア採用に強いことは同じではありません。
事業者を選ぶときは、雇用法人の有無、採用支援の範囲、技術評価、給与設計、入社後支援を分けて確認します。

労務機能と採用機能を分けて見る

確認項目

質問例

判断ポイント

雇用法人

インドで誰が雇用主になるか

自社法人か提携先か

採用機能

候補者紹介を含むか

母集団と職種の実績

技術評価

誰がスキルを判定するか

自社要件に合わせられるか

給与設計

市場データをどう出すか

都市・経験別に説明できるか

入社後支援

定着支援を含むか

企業側との役割分担

インド採用で確認したい実務差

EOR事業者が給与計算に強くても、ITエンジニアの採用市場や技術評価に強いとは限りません。
反対に、人材紹介会社が候補者ネットワークを持っていても、現地雇用の法的基盤を自社で持っているとは限りません。
両者を分けて評価し、必要に応じて組み合わせることが、インド採用では現実的です。
特にインドでは、都市、大学Tier、現職企業、候補者の英語力や日本語学習意欲によって、給与期待値と入社後の立ち上がり方が変わります。
EORの契約可否だけでなく、採用したい職種に対してどの母集団を持ち、誰が技術面接を設計し、入社後にどこまで伴走するのかを確認します。
採用と雇用のどちらを外部に任せるのかを分けて決めると、事業者比較の軸がぶれにくくなります。

EOR導入で起きやすい失敗

EORを採用代行だと考える

契約後に候補者が自動的に紹介されると思い込み、採用計画が止まるケースがあります。
候補者発掘、面接、技術評価が料金に含まれるかを契約前に確認します。
採用機能が含まれない場合は、日本企業が自社で母集団形成を行うか、人材紹介会社や採用支援会社を別に組み合わせます。
この判断を後回しにすると、EORの契約準備だけが進み、肝心の候補者選定が遅れます。

月額手数料だけで比較する

福利厚生、為替、退職時費用、採用費を除いた価格だけでは、実際の総コストを比較できません。
同じ前提条件で総額見積もりを作り、直接雇用や業務委託と比較します。
特にインドでは、給与水準、福利厚生、退職時の扱い、機器やセキュリティ対応を含めて見ないと、社内稟議で説明した金額と実際の運用費がずれます。
見積もり依頼時には、給与、契約期間、福利厚生、採用支援の有無を固定して比較します。

入社後のマネジメントを用意しない

EORは現地雇用を管理しますが、仕事の優先順位、評価、キャリア設計まで代行するわけではありません。
日本側の責任者、定例面談、評価基準、意思決定権限を入社前に決めます。
入社後の目標設定が曖昧なままだと、候補者は何を評価されるのか分からず、日本側も成果を判断できません。
EORを使う場合でも、業務設計と受け入れ体制は日本企業側の仕事として残ります。

まとめ

EORの導入は、海外雇用の事務を外部化するだけではなく、採用・雇用・業務管理の責任をどう分けるかという設計課題です。
成功条件は、EORが担う雇用契約、給与、税務、法定福利厚生の範囲を契約で確定し、候補者発掘と技術評価を誰が担うかを決め、入社後のマネジメント体制を日本側で用意することです。
月額手数料だけを見て導入すると、採用費、福利厚生、為替、退職時対応を含む総コストや、社内に残る運用負荷を見落とします。
少人数の検証にはEORが有効ですが、人数や事業活動が拡大した段階では、現地法人を含めて再評価する必要があります。
これらを社内だけで設計すると、現地給与の妥当性、技術評価、条件交渉、受け入れ準備が担当者個人の経験に依存しやすくなります。
Phinx(フィンクス)は、インドの大学・人材ネットワークと技術理解を前提にしたスクリーニングを活かし、候補者選定から条件調整、EORを含む雇用方法の整理、入社後の受け入れまでを支援しています。
EORという器だけでなく、その中で誰を採用し、どう活躍してもらうかまで設計することが、インド採用を続けられる形に近づけます。

出典

  • Remote「Pricing」 https://remote.com/pricing

  • Deel「Pricing」 https://www.deel.com/pricing/

  • Employees' Provident Fund Organisation「Present Rates of Contribution」 https://www.epfindia.gov.in/site_docs/PDFs/MiscPDFs/ContributionRate.pdf

執筆者

Maya Takahashi

Head of Career Consulting

執筆者

Maya Takahashi

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