AI導入補助金で何を外注できる?SaaS・個別開発・内製の判断基準

中小企業がAI導入に補助金を使う際は、ソフトウェアの購入と個別開発、社内人件費を分けて発注範囲を決める必要があります。 2026年10月19日時点の公募要領をもとに、SaaS、汎用AIサブスク、AIエージェント、内製開発、RAG整備の確認点を解説します。
目次
結論要約
デジタル化・AI導入補助金とは、中小企業等が生産性向上に役立つITツールを導入する経費の一部を支援する制度です。
ここでは、単独企業のAI導入で確認する通常枠を中心に、専用システム向けの省力化投資補助金・一般型との違いも扱います。
通常枠は、登録済みITツールを登録支援事業者から導入する仕組みです。
ChatGPTなどは製品名だけで判定せず、登録されたプラン、機能、販売経路を確認します。
自社専用の個別開発を、登録ソフトウェアの導入費として一括計上する計画は見直します。
補助事業の経費と自己負担の経費を分け、交付決定後の発注と支払いを計画します。
通常枠の仕組みと申請する公募回
通常枠で申請する企業は、事務局に登録されたIT導入支援事業者とITツールを選びます。
開発会社へAI案件を依頼すれば、どの見積もりでも申請できる仕組みではありません。
補助額と業務プロセスの関係
業務プロセスとは、販売支援や会計など、制度で定める業務の区分です。
通常枠の補助額には、導入ソフトウェアが持つプロセス数の要件があります。
補助金申請額 | 必要なプロセス数 | 基本補助率 |
|---|---|---|
5万円以上150万円未満 | 業務プロセス1種類以上 | 1/2以内 |
150万円以上450万円以下 | 所定のプロセス4種類以上 | 1/2以内 |
これは購入総額ではなく、申請する補助金額の区分です。
補助率引上げには別条件があり、汎用の自動化・分析ツールだけでは申請できません。
まず導入対象の業務と登録内容を照合します。
第6次と第7次以降の資料
10月19日時点で、第6次の締切は10月30日17時、交付決定は12月10日の予定です。
一方、10月9日には、第7次以降の給与支給総額や最低賃金に関する要件変更が公表されました。
過去の交付歴や申請額によって要件が変わるため、申請する回の公募要領と別紙を使ってください。
経理・人事担当者にも、給与計画と報告義務を確認してもらう必要があります。
AI搭載SaaSと汎用AIサブスクの確認点
SaaSは、インターネット経由で利用するソフトウェアです。
AI機能を含む顧客管理や会計サービスを検討する企業は、機能の便利さに加え、登録されている製品と契約内容を確認します。
AI搭載SaaSの購入と導入支援
通常枠では、対象ソフトウェアのクラウド利用料を最大2年分まで計上できます。
導入設定、研修、活用コンサルティング等も対象になり得ますが、登録された役務の条件に従います。
任意のコンサルティング契約まで含められるわけではありません。
見積もりを取る際は、ソフトウェア名、プラン、利用期間、導入支援の作業を分けてもらいましょう。
業務に必要な権限設定や既存データの移行が含まれるかも確認します。
登録範囲から外れる作業は、当初から別の予算で扱う方が比較しやすくなります。
ChatGPT等の製品名だけで判断しない
ChatGPT、Claude、Microsoft Copilotのような汎用AIも、製品名だけでは対象可否を確定できません。
ITツール検索で該当製品と提供事業者を探し、プラン、登録機能、対象業務を照合します。
一般の販売サイトで直接契約したサブスクが、そのまま申請対象になるとは限りません。
候補が汎用プロセスに該当する場合は、業務プロセスを持つソフトウェアとの組み合わせも確認します。
補助金のために不要なツールを追加する前に、自己負担で必要分だけ導入した場合の総額も比べるべきです。
AIエージェントの個別開発と省力化投資
AIエージェントは、情報の参照に加え、外部システムの操作まで行う仕組みです。
既製サービスの導入と、自社向けに新しく作るシステムでは、補助経費の検討先が異なります。
通常枠で扱えない個別開発
ITツール登録要領では、未完成で個別開発を伴う製品や、特定顧客向けに限定された製品等を対象外としています。
そのため、自社の受発注システムへ接続するエージェントを新規開発し、全額を通常枠の登録ソフト代にする計画は適切ではありません。
既製サービスの設定作業と、独自の連携プログラムを作る作業を区別してください。
省力化一般型を検討する条件
中小企業省力化投資補助金の一般型は、現場に合わせた専用ソフトウェアやシステムの構築も扱います。
ただし、AIを使うという説明だけでは足りません。
第8回要領では、省力化効果や投資回収期間に加え、生産性・賃上げ等の計画を求めています。
単価50万円(税抜)以上の設備投資が1つ以上必要で、小さな試用案件へ一律に向く制度ではない点に注意が必要です。
第8回は10月16日に締切済みです。
第9回は11月上旬の公募開始、12月下旬の締切を予定していますが、申請条件は次回要領の公表後に確定します。
現段階では、削減する作業と導入後にも残る確認作業を洗い出し、開発範囲と効果の根拠を準備します。
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内製開発とRAG・データ整備の費用区分
社内エンジニアが作る場合も、作業の全てを補助対象として計算してはいけません。
社内工数、外部ソフトウェアの購入、開発会社への委託を区分し、制度ごとに確認します。
内製する担当者の人件費
省力化一般型の第8回要領では、自社の人件費は対象外です。
社内システムを自社人員で開発・改修する場合も含まれます。
通常枠も登録ITツールの導入を支援する制度であり、社内開発者の給与を登録ツール代として扱うことはできません。
内製の事業計画には、開発時間に加え、テスト、保守、引き継ぎの社内工数を自己負担として織り込みます。
RAGを構成する作業の切り分け
RAGは、社内文書等を検索し、その内容を生成AIの回答に使う仕組みです。
既製の検索サービスを買う部分、接続プログラムを作る部分、文書を整理する部分では、確認する経費が変わります。
外注先には、ライセンス、文書の変換、連携開発、権限設定を分けた見積もりを依頼してください。
省力化一般型では、導入設備と関係のないデータ作成・投入や通常業務の代行は対象外です。
全社の文書整理費を、AIという名称だけでまとめて計上する計画は避けます。
まず対象業務で使う文書と更新責任者を決め、必要な整備範囲を説明できる状態にしましょう。
社内の文書管理が未整理なら、検索画面の開発より先に、この準備へ予算を配分する方が現実的です。
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見積書と交付決定後の資金計画
同じAI導入計画でも、購入するものと担当者の作業を分けると、確認すべき資料が変わります。
次の図は、補助金の支給可否を決めるものではなく、経費を調べる入口を示したものです。

Software licenseは登録ツールと提供事業者、Custom systemは専用構築の要件を確認します。
In-house workでは社内人件費を購入費から分け、どの経路でも申請する公募回の資料へ戻ります。
作業と証憑を対応させる
省力化一般型の第8回要領では、システム構築に仕様書と積算根拠を求め、開発一式だけの見積もりを認めていません。
発注側は、対象業務、作業範囲、成果物、数量や工数を対応させます。
回答品質のテスト結果や引き継ぎ資料も、開発会社から受け取る成果物に含めておくと検収が進めやすくなります。
発注前の着手と立替資金
通常枠と省力化一般型では、交付決定前の契約・発注は補助対象になりません。
採択の連絡だけで開発を始めず、交付決定を確認してから契約します。
申請準備の相談と、有償の開発契約を混同しないことが必要です。
補助金の入金を支払原資にできるとは限りません。
経理担当者は、補助対象外の費用や税金も含め、導入代金を支払える資金を確保します。
入金まで待てない計画なら、導入範囲の縮小や自己資金での実施を先に検討してください。
外注先へ相談する前の社内準備
相談時には、補助金の名称と希望額だけでなく、減らしたい仕事を説明できる資料を用意します。
経営者、現場担当者、情報システム担当者が、同じ対象業務を想定しているかを先に確認しましょう。
現行業務と導入後の評価
たとえば、問い合わせ対応を対象とするなら、件数、調査時間、回答の確認方法を記録します。
AIが回答案を作った後にも人が全文を調べ直すなら、その時間も導入後の作業です。
削減時間を過大に見積もらず、誤回答の確認や文書更新を含めて費用対効果を判断します。
外注先には、対象業務、利用者、接続するデータ、予定時期を渡します。
機密情報そのものを最初から共有する必要はありません。
まずデータの種類と権限を示し、どの範囲なら見積もりや試作を進められるかを決めます。
導入判断と申請判断の担当者
業務部門は成果と運用、開発会社は仕様と実装、経理・人事は支払いと給与計画を確認します。
補助対象の最終的な扱いは、対象公募の事務局へ具体的な経費内容を示して確認するのが適切です。
開発会社の提案だけで採択や支給を確定させないでください。
既製サービスで業務を満たせる企業は、登録内容と導入支援を確認します。
独自連携が必要なら、個別開発の範囲と自己負担予算を先に詰める順番です。
まだ文書や業務が整理できていない企業は、対象業務を絞る準備から始めます。
まとめ
AI導入で補助金を活用する際は、何を購入し、何を開発し、誰が運用するかを分ける必要があります。
通常枠は登録ITツールの導入が中心で、自社専用の個別開発や社内人件費を同じ扱いにはできません。
AIという名称を付けても、経費の性質や登録条件が変わるわけではありません。
判断の基準は、対象業務と経費の対応、申請する公募回の要件、交付決定後に実施できる計画です。
既製サービスが業務を満たすなら登録プランと導入支援を照合し、独自連携が必要なら専用構築の範囲を明確にします。
省力化一般型の次回申請を考える企業も、公表済みの予定と、まだ確定していない次回条件を分けて準備を進めてください。
補助対象に含まれない準備や社内作業にも、予算と担当者が必要です。
担当者が個人で試作できても、引き継ぎ、回答精度の検証、文書更新を属人化させたままでは継続運用が難しくなります。
内製・外注の境界は、画面を作れるかに加え、品質を再現できるかで決めるべきです。
支給後にも残る利用料や確認作業まで含め、補助金がなくても続けられる規模を見極めましょう。
Phinx(フィンクス)は、業務課題の整理から要件定義、AI導入、データ基盤・既存システム連携、導入後の定着まで一体で支援します。
補助金の申請支援とは役割を分け、必要な業務改善と、それを実現する開発範囲をつなげて考えられることが強みです。
出典
デジタル化・AI導入補助金2026「通常枠」 https://it-shien.smrj.go.jp/applicant/subsidy/normal/
同「通常枠 公募要領(第6次まで)」 https://it-shien.smrj.go.jp/pdf/it2026_koubo_tsujyo.pdf
同「ITツール登録要領」 https://it-shien.smrj.go.jp/pdf/it2026_touroku_it_tool.pdf
同「第7次公募回以降における制度変更のお知らせ」(2026年10月9日) https://it-shien.smrj.go.jp/news/40124
同「通常枠 公募要領(第7次以降)」 https://it-shien.smrj.go.jp/pdf/it2026_kaitei_koubo_tsujyo.pdf
同「事業スケジュール」 https://it-shien.smrj.go.jp/schedule/
中小企業省力化投資補助金「一般型 第8回公募要領」 https://shoryokuka.smrj.go.jp/assets/pdf/application_guidelines_ippan_08.pdf
同「スケジュール(一般型)」 https://shoryokuka.smrj.go.jp/ippan/schedule/





